国旗
第168回 緑園国際交流トークサロン   国章
アルメニア::古代の脅威を紐解く、知られざる道 
講師は在日アルメニア共和国大使館参事官シルカニャン・サルキス博士
貴重な美しい写真で歴史・文化・食・日本との深い絆  
   
   
   
 緑園国際交流委員会主催の第168回 緑園国際交流トークサロン「アルメニア:古代の驚異を紐解く、知られざる道が7月25日(土)緑園クラブハウスで開催されました。

 今回は南コーカサス地方に位置する魅惑の国アルメニア共和国をテーマに、在日アルメニア共和国大使館参事官のシルカニャン・サルキス博士、同氏の奥様アンナ・シルカニャンさん、通訳にはアリナ・ニューマンさんをお迎えし、貴重な美しい写真で、歴史・文化・食・そして日本との深い絆について、たっぷりと語っていただきました。当日の講演内容をダイジェストでご紹介します。
 
 シルカニャン・サルキス博士、同氏の奥様アンナ・シルカニャンさん、
     通訳にはアリナ・ニューマンさん
1. アルメニアってどんな国? 〜地理と概要〜
  アルメニアは、黒海とカスピ海の間に挟まれたコーカサス地方の南部に位置する内陸国です。  領土は約29,743km²(日本の九州よりやや小さい面積)
 人口は約310万人(2026年予測)。首都は、何とローマよりも古いとされる2808年の歴史を持つ 古都エレバンです。
 また、国旗を構成する「赤・青・オレンジ」の3色は、それぞれアルメニアの人々の苦難と血、平和な空、そして不屈な労働精神を表しています。
  国章には、中央の盾に聖なるアララト山とその上に描かれた聖書に登場するノアの箱船が描か れています。その周囲には、歴史上のアルメニアの四つの王朝の紋章が配置されています。盾の 両側は鷲とライオンが支え、その下には剣、木の枝、麦の束、鎖、そしてリボンが描かれています。

2.世界最古のキリスト教国家と、
独自のアルメニア文字
  アルメリアを語るうえで欠かせないのが「世界で初めてキリスト教を国教とした国」という歴史です。
西暦301年、ティㇼダテス
によって採択され、最古のキリスト教会とされるエチミアジンどの歴史的建築物が今に伝えられています
 さらに、アルメリア使途教会や独自の文化を守るため、西暦405年にメスロプ・マシュトツによって創られた「アルメニア文字」 も大きな特徴です。 39文字からなるその美しい文字は、アルメニア国内に壮大な意志の文字モニュメントが作られるほど國人の誇りとなっています。
 
   

3.世界遺産の修道院群と豊かな自然の驚異
 
アルメニアには、ユネスコ世界遺産に登録されている数多くの歴史的名所があります。
 ハフバト修道院、サナイン修道院:10世紀に建てられた美しい中世の建築
 ゲガルド修道院:4世紀に創建され、背後の岩山(断崖)を穿って造られた神秘的な岩窟修道院 

  自然の驚異も尽きません。国土の6分の1の面積を占める広大な「セヴァン湖」はユーラシア大陸最大級の高地淡水湖です また、ガルニ渓谷にある石の交響曲と呼ばれる見事な玄武岩の柱状節理の断崖やイギリスのストーンヘンジよりも古いとされる紀元前3500年の考古遺跡「カラフンジ」など、息をのむような絶景が広がっています。  

4.ユネスコ無形文化遺産に輝く「食」と「音楽・ダンス」
   

  講演では、アルメニアの豊かなライフサイクルを彩る伝統文化も紹介さ
 れました。
伝統ダンス
  伝統の音色・ドゥドゥク:アプリコットの木から作られるダブルリード
  の木管楽器。

 
伝統の主食・ラヴァシュ: 薄く伸ばして粘土のオーブンで焼く伝統   的なパン。その調理法や文化的意味合いが無形文化遺産に指定さ  れています。
 
多彩なグルメ: 牛や羊の部位を煮込んだ「ハシュ」、アルメニア風   バーベキュー「ホロヴァッツ」、かぼちゃに米やドライフルーツ   を詰めて焼いたデザート「ガパマ」、そして20種類のハーブを詰め  たフラット、ブレッド「ジェンギャロフ・ハッツ」など。その美味  しさに会場からは感嘆の声が漏れました。

  お酒の歴史も非常に古く、世界最古(紀元前41004000年頃)の「アレニ1」ワイナリー遺跡が発見されて  います。またアルメニアのブランデー(アララト)は、イギリスのウィンストン・チャーチル首相がソ連のスターリンから紹介されて以来、生涯こよなく愛し毎年数百本を取り寄せていたという逸話も紹介されました。
 
5.チェス強国、そして日本との「意外な絆
 
 アルメニアの教育は非常にユニークです。2011年から、国内のすべての公立学校においてチェス」が必須科目(義務教育)と
 なっています。論理的思考や集中力を養う教育が根付いており、多くの世界チャンピオンを輩出しています。

  そして、日本との意外な絆に会場は大いに盛り上がりました。日本人が大好きな「メロンパン」ですが、実は大正時代に東京の帝国
 ホテルで働いていたアルメニア人のパン職人、ホヴハンネス(イワン)・サゴヤン氏が日本で初めて焼き上げたものだと言われていま
 す。現在も東京の日野市には、彼の弟子が創業した「ムッシュイワン」という人気のベーカリーが残っています。  

   また、日本の吹奏楽界で絶大な人気を誇る名曲『アルメニア舞曲』(アルフレッド・リード作曲)は、伝統的なアルメニア民謡の
 旋律をベースに作られており、文化を通じた両国のつながりを感じさせるエピソードでした。


6.質疑応答
 本セッションでは、サルキス・シルカニャン博士がアルメニアの文化、歴史、国際関係について幅広い質問に、丁寧に答えてください
 ました。
① 国名や人名について、自国では建国者にちなみ「ハヤ」と呼び、名字の語尾「ヤン」により世界中のアルメニア人が一目で判別可能で
 あると説明された。
② 食文化では、日本のメロンパンの創始者が横浜に眠るアルメニア人職人である縁が紹介され、現在現地でも逆輸入の形でカフェ等に導
 入されている。また、特産のアンズはジャムやパイのほか、種の中身(仁)まで食される。発明好きの国民性からATMやMRI、
 カラーテレビ等の開発にも貢献している。 
③ 言語・外交面では、歴史的なロシア語から若者の英語学習へとシフトしており、経済枠組みはユーラシア経済同盟に属しつつも、歴史・
 文化的に近いEUや欧米との連携強化を目指している。
④ 対日関係では、幼稚園や大学での日本語教育など親日感情が強い。
⑤ 宗教面では、301年に世界で初めてキリスト教を国教化した伝説(奇跡的に生き延びた啓蒙者グレゴリオの逸話)や、カトリックや正教
 会とは異なる独自体制の「アルメニア使徒教会」であることが語られた。
⑥ 歴史・文化面では、四方をイスラム教国に囲まれ、戦争や迫害、虐殺の歴史を経ながらも信仰を中心とした文化を守り抜いた。約4000
 ある修道院 の半数 は今も機能している。
⑦ 国内外コミュニティでは、国外コミュニティ(ディアスポラ)の存在も大きく、国内人口よりも国外在住者が大幅に上回る(日本には
 約200人)。 国外の知見や資金を活用したIT教育施設(TUMOセンター)の展開など、世界中のアルメニア人が強い結びつきで母国
 の発展を支えている。
⑧日本の料理では、博士は「和食はどれも美味しく、好きです、と語っていました。

6.サロンの様子
  講演の最後には、参加者の皆様から非常に多くの質問が寄せられ、シルカニャン参事官も一つひとつ丁寧に、笑顔でお答えください
 ました。夏の暑い時期に互いに水をかけ合って楽しむ「ヴァルダヴァル」というお祭りの紹介もあり、アルメニアの開放的で温かい
 お人柄が伝わる素晴らしい2時間となりました。

  遠く離れたコーカサスの国でありながら、メロンパンや吹奏楽など、私たちの日常に深く溶け込んでいるアルメニア。
  今回のサロンをきっかけに、この「古代の驚異に満ちた国」へ旅をしてみたいと感じた方も多かったのではないでしょうか。

 
 お疲れさまでした。