No.124 緑園国際交流 トークサロン 
40年の中南米勤務を振り返って中南米を語る 
元グアテマラ大使 

講師の四之宮平祐さん   
講師の四之宮平祐さん  
  緑園都市コミュニティ協会(RCA)国際交流委員会が主催する第124回トークサロンが4月25日(土)午後、緑園クラブハウスで開催されました。今回のゲストは元グアテマラ大使で、最近までグアテマラ・マヤ文化協会会長を務められていた四之宮平祐さん。そこで今回のテーマは「元グアテマラ大使、40年の中南米勤務を振り返って中南米を語る」でした。

 長年の現場の第一線で活躍された経験と深い世界史の理解をベースに、まずご自身の外務省時代の経歴等のお話の後に、中南米・カリブ全域の歴史、国状、続いて大使として勤務されたグアテマラについて中南米の縮図と言える国であることの具体的な説明ののち、中南米対応における昨今の米国政権への懸念、最後に日本との関係等、広範囲に渡った熱のこもった興味深いお話でした。以下そのお話の概要です。

(1)外務省外交官としての経歴
 外務省在職40年間 2007年の退官迄、スペイン語ベースに中南米のエキスパートとして外国勤務年数25.5年。在籍した国数10ケ国(在勤順に、スペイン、メキシコ、コスタリカ、ボリビア、スペイン、ペルー、ベネズエラ、チリ、ペルー、グアテマラ)
 特にフジモリ・ペルー大統領誕生時の期待とその後の崩壊等の出来事は貴重な思い出である。
   

(2)中南米・カリブ諸国について
 中南米諸国は20ケ国、カリブ海諸国が13ケ国。先住民のルーツは氷河期ベーリング海峡が陸続きであったことから、モンゴロイド主体とみられている。その後スペイン筆頭に欧州諸国の植民地支配により、アフリカ、インド等の労働力としての各種人種の流入により多様化し、それぞれの独立運動、内戦等経て現在にいたる。そのような経緯から、多くの国の公用語はスペイン語であり、それ以外もその経緯からオランダ語、ポルトガル語、英語、フランス語等である。

 国の評価尺度として、平均余命、教育水準、一人当たりのGDPで測定する「人間開発指数」がある(日本は世界20位程度)が、この指数で、中南米・カリブ諸国を比較すると、上位には、チリ(43位)、アルゼンチン(45位)、ウルグアイ(48位)となっており、これは共に先住民の割合が少なく白人が主体(80%超)の国であることに関係があり、治安情勢とも強い相関関係にある。

 料理の美味しい国といえば、圧倒的にペルーである。海の幸をレモン果汁で締めた海鮮マリネの「セビーチェ」、牛の心臓の串焼き「アンティクーチョ」は代表的料理で、特にお勧めである。お勧め料理とは言わないが、ペルーではチャーハンはどこに行っても食べられる。これは1850年代の奴隷禁止のあおりで、労働力として中国系が10万人程渡ってきたことの名残といわれている。
   

(3)グアテマラについて
 いわずと知れたマヤ文明発祥の地であり、原住民としてその子孫種族が21あり、それぞれの言語をもっている。1500年代にスペインの植民地となり約300年続くが、1800年代終盤にカブレラ独裁政権樹立も、米国ユナイテッド・フルーツ社に実質経済支配され、米国の裏庭と称される時代が始まった。1944年グアテマラの春として、米国からの支配の解放目指したが失敗、その後軍人からなる反政府組織との内戦状態が36年間続き、1996年に和平合意となり現在に至る。まさしく植民地支配から、その後独立、さらに内戦等経ての現在といった中南米・カリブ諸国の縮図である。

(4)トランプ政権とメキシコについて
 トランプ大統領は、メキシコを名指しし、不法入国、不法就労対策を政策の一つの柱にしている。データとして、2016年の米国への不法入国者全体推定数は41万人で、そこに占めるメキシコ人は19万人、残りのほとんどが中南米諸国と言われている。ちなみに2000年にはメキシコからの不法入国は161万人、その他は2.8万人と言われており、絶対数自体は大きく減少している。
   

 不法就労者に至っては、2014年で全米不法就労者推定1110万人の内585万人がメキシコ人であるといわれている。この不法就労者の人件費は米国民の1/10と言われており、この構造がアメリカ経済の下支えになっていることはいうまでもなく、メキシコとの貿易の実態とも合わせると、米国経済はメキシコとの関係なしには成りたっていないことを、トランプ大統領が、どこまで理解把握しているか疑問である。

(4)日本との中南米・カリブ諸国との関係
 日本にとって中南米とは、遠くて近い国という親近感があると認識している。これは「移住」がキーワードになっている。これは多数の日系人の存在によるものであり、海外で一旗あげようと、1868年のハワイ移住に始まる戦前、戦後の状況からのものである。現在中南米にいる日系人200万人強に、その殆どがブラジルと言われ、日本人の「勤勉・労働・正直」の国民性が、農業分野で高い評価を得るに至った。
 講師、スタッフと有志で  
講師、スタッフと有志で